遺言でなにができるのかについてざっくりと。あわせて「相続させる」旨の遺言とはなにか?を説明します

遺言

 

遺言といいますとどのようなものを想像なさるでしょうか?

テレビドラマなどをみると、それをもとに争いが生じるものみたいなイメージもあられるかもしれません。また、『遺言によって「相続」が発生するんでしょう?』とお考えの方も多いかもしれません。なんとなくふわっと分かりそうで、分かりにくい、遺言について、ご説明いたします。

 

遺言でなにができるのか?

学問上の分け方はいろいろあるかと思いますが、遺言によってなにができるのか?については、大きく分けると

遺言でなにができるのか

  • 財産関係
  • 身分関係

と分けることができます。

身分関係というとなんだろか?というと例えば、認知などが遺言でできます。

遺言でなにができるのか

  • 財産関係
  • 身分関係
    • 認知

認知とはなにか?という問題はありますが、今回は、先に進みます。他に何ができるかといいますと、遺言では、できることは決まっています。限定されています。

遺言でなにができるのか

  • 財産関係
  • 身分関係
    • 認知
    • その他(できることは限定されている)

このできることは限定されているということは、遺言制度の趣旨からも導くことができます。

 

遺言制度の趣旨は、被相続人(遺言を書いた人)の最終の意思の尊重です。

 

被相続人の意思を尊重するため、遺言には、強力な効果が与えられています。よくよく考えると、1人で紙に書くだけだからですね。だけというのは言い過ぎで、残された方からの「確認」の手続きは「必要」になるものもあり、さらに「実現」が必要なものもありますが。ここで言いたいのは、遺言は強力なので、法は、なんでもかんでも遺言でできるようにはしていない!ということです。

 

Column
上記のことは、法律上は意味のないことであっても、遺言に書いてはダメということではありません。子供たちに「きょうだい仲良く暮らしてほしい」と書くことは、まったく問題ありませんし、どちらかというと、私は、オススメします。残された方たちに気持ちを伝えるツールとしての遺言です。お手紙としての遺言です。なかなか口に出しては言えないことも、紙に書くことはできるかもしれません。

残された遺言をどのように解釈するか?

ここでちょっと見方を変えてみます。

先ほどまでは、遺言を書く側から考えておりましたが、遺言を受け取った側から、残された遺言をどのように解釈するのか?を考えてみます。

残された遺言をどのように解釈するか?これも遺言制度の趣旨から導かれることになります。被相続人の最終の意思の尊重です。財産関係のところが一番イメージしやすいと思いますので、そこで説明します。

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遺言でなにができるのか

  • 財産関係
    • イメージしやすいと思われる、いわゆる相続っぽいもの
    • その他(例えば信託など。できることは限定されている)
  • 身分関係
    • 認知
    • その他(できることは限定されている)

まず、財産関係もできること(種類)は、限定されています。 遺言というとイメージしやすい、相続っぽいものは、さらに2つに分けられます。

 

相続分の修正と遺贈です。

 

なぜ相続分の修正と書くのか?というと、遺言によって相続が発生するんじゃないという意味です。被相続人が亡くなることにより相続が発生します。遺言がなければ法律で決められた相続分となります。遺言があれば、その法定相続分を修正するという流れです。

遺言でなにができるのか

  • 財産関係
    • イメージしやすいと思われる、いわゆる相続っぽいもの
      • 相続分の修正
      • 遺贈
    • その他(例えば信託など。できることは限定されている)
  • 身分関係
    • 認知
    • その他(できることは限定されている)

残された遺言をどのように解釈するか?「誰々にやる」「誰々に贈与する」と書かれていたら・・・?

やっと残された遺言をどのように解釈するか?の話ですが、方針は、一緒です。

被相続人の最終の意思の尊重です。

ここでは、できるだけ被相続人の意思が実現できるように、という方向になるということです。

  • 「やる」「贈与する」の相手方が、相続人じゃない人だったら・・・遺贈となるでしょう。もともと相続人じゃないので、相続分の修正じゃないでしょうと。
  • 「やる」「贈与する」の相手方が、相続人だったら・・・このときは、悩ましいですね。相続分の修正なのか?遺贈なのか?

こんな感じで、残された方が迷わなくてすむように、遺言の書き方は、一応推奨される書き方があります。それが「相続させる」旨の遺言です。

推奨される書き方としての「誰々に相続させる」という書き方。またこれをどのように解釈するか?

相続させると書いたとしても、相続人じゃない人に、としたらそれは遺贈となります。

いきなり無効!ではありません。できるだけ被相続人の最終の意思を尊重しようということです。

ふと、被相続人の最終の意思を尊重しようとするならば、相続人じゃない人に対する相続させる旨の遺言は、養子縁組と考えてもいいんじゃないのか?とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。ただこれは、不可です。

遺言でできる身分関係の行為に養子縁組が入っていないからです。

  • 「誰々に相続させる」の誰々が、相続人じゃない人だったら・・・このときは遺贈となります。もともと相続人じゃないので、相続分の修正じゃないでしょうと。
  • 「誰々に相続させる」の誰々が、相続人だったら・・・このときは、見取り図では、相続分の修正となります。

そして、特定の財産を「相続させる」旨の遺言は、かなり強力な効果が発生します。

「相続させる」旨の遺言で発生する、強力な効果とは?

これは、相続させる旨の遺言の対象となった遺産は、遺産分割の対象からはずれる、という効果です。

相続させる旨の遺言で、遺産をもらう人は、その遺産については、ほかの相続人に承諾(はんこ)などをえる必要がなくなります。これは、かなり強力な効果といえます。

なお、このことは、相続人全員参加があるならば、遺言とは違う遺産分割ができる、ということとは矛盾しません。

あとは、遺産が不動産の場合ですが、登記手続き面の効果として、手続きが簡便になる、という効果もあります。

まとめ

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今回は、遺言によってなにができるのか?をざっくりと考えました。

遺言でなにができるのか

  • 財産関係
    • イメージしやすいと思われる、いわゆる相続っぽいもの
      • 相続分の修正
      • 遺贈
    • その他(例えば信託など。できることは限定されている)
  • 身分関係
    • 認知
    • その他(できることは限定されている)

あわせて、残された遺言をどのように解釈するのか?について考えました。視点は、被相続人(遺言書を書いた人)の最終の意思の尊重、というものでした。

今回、書かれていないことは、相続と遺贈の違い、遺言を書くときに守らなければならない様式、などです。

 

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